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2005.7.7
連続小説
「GAMER 〜NAS芹沢物語〜」

(NAS芹沢@大阪PalmIII)


私の名は「なる」。
あ、いや、現在の名は「NAS芹沢」(なす・せりざわ)。
それは、私がゲーマーだった頃。
遠い昔のお話・・・。


第20回「正義を貫け! 死闘決着」


平賀正義となるの戦いは、いよいよ終盤へ入った。

なる:(どうする?奥義がどんなものかわからないけど、さっきのを見る限りでは、やはり攻撃してくるのかもしれない・・・)

あかね:なる、気をつけて!

平賀正義は、今まで何事もなかったかのようにゲーム画面に集中してプレイしていた。
奥義を出すぞ、という素振りはまったく無かった。

平賀:NAS君、君はやはり私が思っていた以上の素晴らしいゲーマーだ。

ふと、つぶやいた平賀正義はこう続けた。

平賀:しかし、ゲーマーは華麗なプレイをただ見せるだけではダメだ。そう、勝たなければ。

平賀正義はそう言うと、またしても全身に力を込めるように体を震わせながら気のようなものを高めはじめた。
しかし、今度は目は閉じていない。

あかね:奥義じゃない技でも、あれだけ意識を集中させて息が切れるほど疲れていた。奥義はもっと気合を入れなければならないはず。
なる:だとすれば、やはり最後の最後までは出してこない。おそらくゲーム終了直前が勝負か。

平賀正義は華麗なプレイをしながら、さらに気合を入れていた。

平賀:はあーーーーーーーーっ。
あかね:一体どんな技でくるの?なるはどうしたらいいの?

あかねは、これから起こることが予想不可能なだけに何もすることができなかった。
なるの左手の甲を見たあかねは、切り傷から出ていた血が止まっているのを見て少し安心した。

あかね:でも、あれよりもすごい技が来たらどうするの、なる?

なるは今までのように変わらずプレイしていた。
しかし、スコア自体はまだ平賀正義の方が数万点上回っており、このままでは勝てないのも事実である。

あかね:なる、がんばって!

あかねはただ祈りながら応援するだけだった。
全方向シャッターで閉じられた、異様な雰囲気のゲームセンター。
すべての台が稼動していたが、三人の他は誰もいない。
なると平賀正義、二人のレバーをさばく音とボタンを押す音が響いていた。

なる:(いよいよ最終面ボスが来るっ)
あかね:このままでは、勝てないわ。なる・・・。

いよいよゲームは最終面7面の最後のボスに突入しようとしていた。
新作ゲームではあるが、二人ともここまで全くミス一つせずに進んできている。
しかし、さすがに最終面なだけあって二人とも余裕がないのかほとんどしゃべらなくなった。

平賀:いくぞ、NAS君。

平賀正義は突然そう言うと、今までよりも全身に気合を込め始めた。

あかね:奥義がくるっ。

平賀:はああああああーーーーーーーーっ!
あかね:なる、逃げてっ!
平賀:おおおーーーーーりゃあああああああああーーーーっ!!

平賀正義は今までと同じようなモーションでなるに向かって攻撃をしてきた!

なる:(一か八か、いくぞっ)

なるはレバーをちょん、と軽く動かしたのと同時に筐体に手をついて、なんと筐体の操作台の上で逆立ちをした!
さらに、逆立ちをしたまま両腕を曲げ、その反動を使ってなんと両手だけを使って逆立ち状態のまま真上にジャンプした。

平賀:なんだとっ!
あかね:なるっ!

平賀正義とあかねは、ほぼ同時に驚きの声をあげた。

なる:(奥義を避けつつ、しかも平賀正義より高得点を取るためには、)

足で飛んだときよりははるかに低いものの、なるは確かに空中に浮かび上がった。

なる:(奥義を避けてすぐにゲームに戻ることが必要。そのためには、レバーに手が近くなければならない。レバー操作にすぐ復帰さえ出来ればまだチャンスはある)

しかし、次の瞬間なるは衝撃の光景を空中から目の当たりにした。

なる:なにっ!!

誰もいないはずの、誰も触っていないはずのなるの台のレバーが、カクン、と右方向に倒れた。

あかね:あっ!
なる:

平賀正義は自らの技を、なるの筐体のレバーに向けて放ったのだった。

あかね:そんな・・・。
なる:しまった!

なるが操作していた筐体のゲーム画面内の自機は、倒されたレバー通りに右に動いて壁にぶつかり1ミスになってしまった。
なるはレバーから手を離す寸前にレバーを軽く動かすことで、自分が一定時間レバーを触らなくても安全な位置に自機を持っていったのだが、その作戦は見事に破られた。

あかね:平賀正義の奥義は、なる自身を攻撃するものではなくて最初からレバーを動かすための技だったんだわ!
なる:やられた。完全に。

もはや勝負はついていた。
なるは1ミスによりパーフェクトボーナスを逃したために、平賀正義のスコアには届かなくなった。
平賀正義はその後もきっちりとプレイし、最終面ボスをクリアするとパーフェクトプレイで終了した。
なるも、最後までゲームをやり遂げた。

あかね:負けた・・・のね、私たち。
なる:残念だけど、そういうことだね。

平賀正義は息を切らしながら、二人に語りかけた。

平賀:いいか、NAS君。勝負とは・・・勝ってこそ、価値がある。そして世の中には君のような良い人ばかりがいるわけではない。どんな汚い手を使ってでも・・・勝とうとする輩(やから)がたくさん・・・いる。

あかね:あんたもその一人ってことね、今度はあたしが相手になるわ!

あかねは、今にも平賀正義に飛びかかりそうなほど怒りを爆発させていて、ファイティングポーズをとっていた。

平賀:おっと、美しいお嬢さんとはさらさら戦う気はないのでね。これで失礼するよ。

裏口から逃げようとして後ろを向いた平賀正義は、右手をカウボーイハットに乗せ、なぜか一度なるの方を向きなおしてこう言った。

平賀:そんな輩に負けるなよ、NAS君。君は正義を貫くことができるゲーマーだと私は感じた。だからまた近いうちに会うことになるだろう。さらばっ。

そう言うと、平賀正義は颯爽と街の中へ消えていった。
一瞬の出来事だった。

あかね:こら、待ちやがれ〜!勝負はまだ終わってないわよ!

追いかけようとするあかねを、なるが止めた。

あかね:なる。
なる:いいんだ。もう、いいんだ。
あかね:なる、でもあいつは、あいつは・・・。
なる:いや、完敗だよ。今回は。

なるはそう言うと、左手の甲を右手で押さえながら立ち上がった。

なる:平賀正義は終始、僕よりもうまいプレイをしていた。その証拠に、ゲームの途中で一度もスコアを抜くことができなかった。
あかね:それはでも、あいつが変な技を使ってきたから。
なる:いや、ゲーマーたるもの、どんな状況になってもそれに打ち勝ち、最後には勝たなければならない。僕はそれができなかった。だから仕方ないよ。
あかね:なる・・・。

あかねはなるを軽く抱きしめた後、左手の甲の傷を軽く舐め始めた。

なる:あかね・・・ちょっ・・・。
あかね:でも、でもね、もう、こんなに無理しないで。私、なるが心配で・・・心配で・・・。

あかねは泣いていた。

なる:ご、ごめん・・・。僕は大丈夫だよ、ありがとう。

なるはあかねの髪を右手でなでながら、軽く微笑んだ。

平賀正義との戦いは終わった。
奥義が見事に炸裂して勝利した平賀正義。
一方なるとあかねは、これまでの勝負の後とは全く違う、釈然としない気分だった。
勝負としては確かに負けた。しかし、

平賀正義はなぜそこまでして勝ちにこだわるのか?
あの技は一体何なのか?
どうして強いゲーマーたちを狙って勝負するのか?
「また近いうちに会うことになる」という最後の言葉の意味とは?

すべてが謎に包まれたままであった。

つづく

2005.7.31
連続小説
「GAMER 〜NAS芹沢物語〜」

(NAS芹沢@大阪PalmIII)


私の名は「なる」。
あ、いや、現在の名は「NAS芹沢」(なす・せりざわ)。
それは、私がゲーマーだった頃。
遠い昔のお話・・・。


第21回「黒の陰謀」

1週間後、なるとあかねはゲーセンにいた。

あかね:ごめんね、なる。

なるが必死に練習をしている隣で、あかねはそう言った。

なる:ん?何が?

昼食を取る時間も惜しむように、あかねに作ってもらったサンドイッチを食べながらレバーとボタンを動かしていた、なるは聞いた。

あかね:だって、私があのとき「逃げてっ」って言わなかったら、平賀正義にレバーを動かされずにすんだかもしれないのに。
なる:それはもういいんだよ、あかね。

ゲーム中のなるはあかねの方を向くことはなかった。

なる:もし逃げなくても、平賀正義にスコアで勝てなかったと思う。だから、次に会ったときのために、こうして練習してるんだから。
あかね:うん、応援してるわ、ずっと。

あかねはなるを後ろから抱きしめた。

なる:や、やめろ、こんなところで恥ずかしいから、ちょっと、あ、せっかくゲームがいいところだったのに、あああ。

なるはひたすら練習していた。
平賀正義のように、自分よりうまい人は全国にまだまだたくさんいるはずだ。
少しでもうまくなりたい、なるの思いはそれだけであった。

あかね:もう、ゲームのこと考えてるときは全然私のことを見てくれないんだから・・・。
なる:ん?何か言った?
あかね:ううん、何も。
なる:あかね、何怒ってるんだ。今日は変だな。

なるは気づいていなかったが、あかねは、いつもとは違う店の雰囲気をすでに感じていた。

あかね:・・・。

なるの座っている台の左隣では、今まで見たことがない男がプレイしていた。
全身黒ずくめの姿で、黒い帽子をかぶり、黒いサングラスまでかけていた。

あかね:(何なの、あの男・・・)

次の瞬間、あかねはなるの右隣の台を見てはっとした。
右隣の台にも、左隣とまったく同じような全身黒ずくめの男が座っていたからである。

あかね:(これは、どういうこと?)

なるは両隣のことはまったく気にせずにひたすら遊んでいる。

あかね:こいつら、なるのことを狙ってる?

あかねがそう思った瞬間、両隣の二人が立ち上がった。

あかね:
黒ずくめの男たち:はあーーーーーっ

なんと、二人の男たちは平賀正義が攻撃を仕掛けてきた時とまったく同じポーズをとりはじめたのだった!

あかね:まさか!?
黒ずくめの男たち:おおおーーーーーりゃあああああああああーーーーっ!!

二人の男は、なるに向かって技を放った。
なるは、平賀正義と戦ったときと同じように、真上にジャンプして攻撃を避けた。
ゲーム台の表面部分はズタズタに切り裂かれたのだった。

なる:何者だ?

なるはゲームをしているときよりも鋭い目つきで二人の男をにらみつけた。

黒ずくめの男たち:平賀正義とはこれ以上かかわるな。
なる:なにっ?

二人の男はなるの左側に集まると、一人の男が言った。

黒ずくめの男:かかわれば、貴様たちも我々の組織に歯向かう者として放っておくわけにはいかん。

もう一人の男も口を開いた。

黒ずくめの男:これ以上我々のことを調べようとすれば、平賀正義と同様、お前たちも生かしておくわけにはいかん。悪いことは言わん。この件からは、手を引くことだ。

なるにそう告げると、二人の男は風のように去っていった。

なる:組織、とは一体・・・?
あかね:あいつらは一体、何者?
なる:すべては、平賀正義に聞けばわかること。
あかね:なる?

厳しい顔をしていたなるは、ふと笑顔に戻ると、あかねに言った。

なる:平賀正義に聞いてみよう。
あかね:なる・・・。
なる:組織とは何なのか、なぜ平賀正義は奴らに狙われているのか、そして・・・
あかね:そして?
なる:僕たちにこういうことがあることを予測して、僕に技の避け方を教えてくれた理由を。
あかね:避け方?まさか、なる、平賀正義はなるにあの技の避け方を教えるために攻撃してきたと言いたいの?

なるはしばらく考えた後、こう言った。

なる:少なくとも今は、平賀正義は敵には思えない。僕には。

なるとあかねは平賀正義を探すことにした。
平賀正義は逃げも隠れもしていなかった。
いくつかのゲーセンに出没しては、強い相手と戦っているとの情報がすぐに得られた。
なるとあかねは、そのうちの一つの店で張り込むことにした。
張り込みといっても、他のゲーセンでしているのと同じように、修行しながら待つだけなのだが。

あかね:ねえ、他のお店にも行ってみようよ。

あかねが辛抱たまらず、そんなことを言い出した三日目の午後だった。

平賀正義:可愛いお嬢さん、またお会いしましたね。
あかね:平賀・・・正義。

平賀正義は突然やって来た。
誰が見てもすぐわかる、カウボーイハット。
とても組織に狙われているようには見えない、目立ちっぷりだった。

あかね:あー出やがったな、この勝ち逃げ男!

あかねは今にも平賀正義に飛び掛ろうとした。

なる:どうしても聞きたいことがあって、あなたを探していました。
平賀:・・・。
なる:黒ずくめの男たちのこと、組織とは何か、そして、どうして僕たちを助けてくれたのか。
平賀:そこまでわかっているのなら、細かいところまで説明しなければならない。場所を変えよう。
あかね:それなら、私の家まで来て。

三人は『GAMER』へ向かった。

水咲幸治:た、田岡!
あかね:お父さん、平賀正義のこと、知ってるの?

平賀正義を見たあかねの父は、驚きの声をあげた。

水咲幸治:田岡、君が『平賀正義』だったのか。
平賀:すみません。隠しておいた方が奴らにいろいろ気づかれずにすんだのです。
あかね:お父さんの知り合い・・・なの?
水咲幸治:とうとう、この日が来たのか。
なる:???

なるには何がどうなっているのか、全然理解できていなかった。

平賀:では、順を追って私から説明しよう。

平賀正義はこれまでの経緯を話してくれた。

平賀:私の本名は『平賀正義』ではない。名を受け継いでいるだけだ。正確には、私は八代目の『平賀正義』。
あかね:は、八代目?
なる:では、昔からこの名前は引き継がれていると?
平賀:その通り。名前の通り、正義を貫くことができる真のゲーマーにのみ与えられる、一子相伝の名前なのだ。
あかね:ゲーマーって、そんなに昔からいたの?
平賀:そう。とはいっても、昔はコンピュータゲームではない。サイコロや花札など、日本古来の遊びすべてを含めた意味でのゲーマーのこと。
水咲幸治:そんな脈々と受け継がれた名前があったとは。
なる:『平賀正義』にそんな秘密が。

なるは驚きの表情を隠せなかった。

平賀:『平賀正義』は、日本の歴史の舞台において危機が迫ったときにのみ現れる。
水咲幸治:ということは、奴らが動きはじめたということか?
あかね:奴ら?あの黒ずくめの男たちの組織のこと?
平賀:お嬢さんの言うとおり。今、日本のゲーマー界に危機が迫っている。強いゲーマーたちがことごとく、奴らとの勝負に敗れ、奴らの傘下に入っているのだ。
なる:奴らの目的とは?
平賀:なぜゲーマーを集めているのかはわからない。ただ、今言えることは、奴らが何か良からぬ事を企んでいるということ。そして、加担したゲーマーたちが次々に不幸になっているということ。
水咲幸治:君は組織について調べているのか?
平賀:しかし、私の想像をはるかに超える速さで組織は大きくなっている。私だけではどうしても奴らに対抗できない。

みんなは微動だにせず、緊張した面持ちで平賀正義の話に聞き入っていた。

平賀:そこで、私と共に戦ってくれる、そして将来的には『平賀正義』の名を受け継いでくれる、真に強いゲーマーを探していたのだ。
あかね:それで全国の強いゲーマーたちに勝負を挑んでいたのね。
平賀:そして、私は一つの結論にたどり着いた。NAS君、君こそが真に正義を貫けるゲーマーであると。
なる:ぼ、僕が?

なるだけでなく、みんなも驚きの声をあげた。

平賀:NAS君、私とともに戦ってほしい。苦しんでいるゲーマーたちを救いそして、真に正義を貫くゲーマーになってほしいのだ。

熱く語る平賀正義の目は、光り輝いていた。

つづく


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