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パームコミュニティーを側面から盛り上げることを目的としたユーザーグループです。
「ぱぐじゃい!わ〜れ〜」と読んでね(はあと)。

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ここからじゃ

2006.12.9
連続小説
「GAMER 〜NAS芹沢物語〜」

(NAS芹沢@大阪PalmIII)



第25回「想いを受け継ぐ美しき瞳 お嬢様の帰国」


喫茶『GAMER』で店番をしていた水咲愛は、退屈だった。

愛:誰も来ない・・・。

本当に誰も来なかった。
後でわかったことだが、この日はちょうど近くのゲーセンで小規模なゲーム大会が開かれていて、常連客であるゲーマー達がみんなそちらへ行っていたという事情もあったのだ。

愛:うーん、お姉ちゃんじゃなきゃ、やっぱり誰も来てくれないのかな?

青いエプロンを身につけた少女は看板娘に少しだけ嫉妬しながら、ぼーっとしていた。
そんな店番の時間が終わろうとしていた夕方近く、不意に店のドアが開いた。

愛:いらっしゃいませ〜。あっ。

そこには、愛と同じ中学生くらいの長い黒髪が美しい少女が立っていた。
一見キリスト教系の女学院を思わせるような、黒を基調とした制服っぽいブレザーとスカートをはいていた。

少女:あ、あなたは、あの時の!

店に入ってきた少女は愛を見るなり、驚きの声を上げた。

愛:あなた、どうしてここに?
少女:あなたこそ、どうしてここに?

長い黒髪の少女二人は立ったまましばらく見つめあった。
お互い、厳しい目つきになって対峙している。

少女:あなたとは、そのうち戦うことになるかもしれませんわね。
愛:・・・・・・。

そのとき、また店のドアが開いた。

あかね:ただいまー。

あかねがドアを開けた瞬間、愛は突然青いエプロンを脱いで投げ捨てると、ドアの方に走った。

なる:わっ、なんだ、どうしたんだ?

あかねと一緒に店に入ろうとしたなるは、急にダッシュで突進してきた愛を間一髪避けた。

愛:おねえちゃん、あと、よろしくね!

愛はそう叫ぶと、街の中へ消えていった。

あかね:そんなにも店番がイヤだったのかしら。

あかねはあきれた顔で開きっぱなしのドアから街の方を見て、そう言った。
なるとあかねは、お店にお客さんがいるのに気がついた。

あかね:いらっしゃいませ! なによ、愛、お客さんをほったらかしにしていくことないじゃないの。

少女:あ、あの・・・。

黒くて丸い瞳が美しい少女は、切り出した。

少女:水咲、・・・水咲幸治さんにお会いしたいのですが。
あかね:えっ、水咲幸治は私の父ですが、いま出かけています。
少女:そうですか・・・。
あかね:私は水咲あかね。私でよければ、代わりにお話を伺いますけど・・・。

少女はなるの方をちらっと見た。

あかね:あ、こいつはなる。ただのエロゲーマーよ。
なる:誰がエロゲーマーだって?
あかね:だってそうじゃない、脱衣麻雀ばっかり遊んでるくせに。
なる:なんで「ばっかり」になるんだよ。そんなことはない。
あかね:じゃあ、なんで「芹沢」にしたのよ。
なる:だからそれはだな・・・

なるとあかねはいつものように口げんかをはじめた。

少女:ゲーマーに、いま危機が迫っているのです。

その声を聞いて、なるとあかねはケンカをやめて、少女の方を見た。

少女:私の名は神宮寺しおり(じんぐうじ・しおり)。私は、私は父のかたきを取りたいのです。
なる:お父さんの?
あかね:事情を話してもらえる?しおりさん。

「神宮寺しおり」と名乗った少女はうなずくと、ゆっくり話し始めた。

しおり:私の父、神宮寺和也(じんぐうじ・かずや)は組織のことを調べているときに、組織によって殺されたのです。7年前くらいのことでした。
あかね:そ、組織ってまさか?
なる:・・・そういえば、平賀師匠が前に言ってたね。昔、あかねのお父さん、そしてもう一人の男の三人で組織について調べていた、と。
あかね:その、もう一人の男の人が、しおりさんのお父さんっていうことね。
しおり:私、父のかたきを取りたいんです。命がけで成し遂げようとしていた意思を受け継ぎたいのです。

しおりは、小さな体をいっぱいに振り絞って、そう話した。
黒くて長い髪が揺れる。

そのとき、店のドアが開いた。
あかねの父、水咲幸治であった。

あかねの父:・・・そうでしたか。娘さんがいるとは聞いていたが。
しおり:私は三歳の頃からずっとアメリカで暮らしていました。先週、日本に戻ってきたばかりです。
あかねの父:お父さんは、あなたに組織のことを?

しおりは首を横に振った。

しおり:何も話してはいません。しかし、父が残した組織に関する膨大な調査データが日本で見つかったのです。それを調べてみた結果、私はここに来ようと思いました。
あかねの父:それだ。私たちが探していたものは。やはり調査結果は存在していたのか。
しおり:その内容によると、どうやら組織は世界中に支部を持っていて、アメリカや日本で特に動きが活発だったことが記されていました。
なる:アメリカでも?
しおり:そうです。そこで、私はもう一度アメリカで現在の組織の状況について調べて来ようと思っています。
あかねの父:なるほど。しかし、くれぐれも気をつけていただきたい。くれぐれも・・・。

あかねの父、水咲幸治はしおりを見つめて心配そうにそう言った。

しおり:はい、ありがとうございます。私には護衛の者もおりますので大丈夫です。
あかねの父:何かあったときは、すぐに連絡していただきたい。私たちはいつでも協力しよう。和也のためにも・・・。
あかね:そういうことなら、もちろん協力するわ。まずは調べることね。私たちは日本で何か調べてみようよ、なる。
なる:僕は、まず平賀師匠にこのことを伝えてくるよ。味方が増えたって、ね。

なるは微笑んだ。

あかね:ようし、では早速しおりちゃんと対戦しようかなあ。
なる:初対面なら、誰とでも対戦しようとするんだな、あかね。
あかね:当ったり前じゃないの。しおりちゃんになら、勝てそうな気がするわよ。なんだか、おっとりしてそうだし。

しおり:あの、実は私、ゲームはしたことがないのですけれど・・・。
あかね:えっ、そうなんだ。それじゃあ余計に今回こそ勝てる気がするわね。
なる:そんな人相手に対戦しないだろ、普通。

あかねはしおりの手を引っ張ると、強引にゲーセンに連れて行くのであった。

なる:あれ?このお店にゲーム台あったんじゃ?

なるは、ふと自分が昔対戦させられたゲーム台が収納されている方を見た。
たしか、このへんから勝手に筐体が出てきたような・・・。

あかね:あ、その台で全然誰にも勝てないから、他のゲームで勝負するのよ。
なる:・・・だめだこりゃ。

三人はゲーセンの中へ入っていった。

しおり:うわー、皆さんすごく楽しそうですわね。どうすれば、ゲームを遊べるのですか?
あかね:どうすればって、お金を入れたら遊べるけど?
しおり:お金・・・。

しおりは懐から一万円札を出すと、必死に入れる場所を探した。

あかね&なる:???

しおりは必死にゲーム台をくまなく調べている。

あかね:あの、しおりちゃん。お札じゃ遊べないんだけど・・・。
しおり:えっ、わたくし、このお金しか使ったことがないのですが。
あかね&なる:はあ???

あかねはポケットから100円を取り出すと、ゲーム台に入れた。

あかね:これでいいのよ。
しおり:私、そのお金見たことがありません。
なる:もしかして、しおりさん、お札しか使ったことがないのかも。
あかね:ま、まさか、そんな人がいるわけないじゃない。

そのとき、背後に大きな人影が現れた。

男:しおりお嬢様は、お札以外使ったことがないのです。
あかね:うわっ、びっくりした。だ、誰?

そこには、ゴウよりも大きな、身長2メートルはあるかという男が黒っぽいスーツを着て立っていた。
突き出た岩のようにごつごつした頭、五分刈りされた髪の毛と、見た目は格闘家風でものすごく恐そうだった。

男:申し遅れました、わたくし、しおりお嬢様の警護を担当しております、室田(むろた)と申します。
あかね:は、はあ。
室田:しおりお嬢様は、硬貨を使ったことがございません。身の回りのお世話は全て私ども神宮寺家に仕える者が行いますので。

なるは、あかねに耳打ちした。

なる:も、もしかして、しおりさんってものすごいお嬢様なんでは?
あかね:コインを使ったことがないって、信じられないわ。なんか、とんでもない子みたいね・・・。
なる:ゲームを遊ぶときに、使うお金の種類から教えたのって初めてだよ・・・。

しおりは無邪気に笑いながら、レバーを動かしていた。

しおり:うわー楽しいー。世の中に、こんなに面白いものがあったなんて、お父様は全然教えてくださらなかったわ。

今度はあかねがなるに耳打ちした。

あかね:なんか、今回対戦したいという気持ちが薄れてきたわ。
なる:なんだか、結構うまそうだよ。

初めて遊んでいるのに、しおりは明らかにあかねよりも上手にプレイしているようだった。

あかね:なんだか、妹がもう一人できたみたい。

あかねは、ゲームに集中するしおりの後ろ姿を見ながら、そうつぶやいた。

しおり:室田、コインが無くなりました。持ってきてくださる?
室田:はっ、ただいま。

室田は低いゲーセンの天井に頭をぶつけそうになりながら、両替機に走った。

その日、しおりはゲーセンの閉店時間まで遊び続けていたという。


つづく
ここまでじゃ

2006.8.19
連続小説
「GAMER 〜NAS芹沢物語〜」

(NAS芹沢@大阪PalmIII)




第24回「情熱の工房 ゲームを遊ばないゲーマー」

喫茶『GAMER』に定休日は無い。
というわけで、お店の看板娘である水咲あかねには当然、休みなどない。
しかし、この日は違っていた。

あかね:やったーーーー!

あかねは楽しそうに叫んだ。
珍しく、妹の水咲愛がお店を番してくれるというのである。
久しぶりの自由を、あかねは得たのだ。

水咲家の中で、愛は最も『GAMER』に近づきたがらない人物である。
その理由は、なるも詳しくは聞いていないが遠い昔に無くなった彼女達の母親に関係があるらしい。
まあとにかく、これであかねは一日中、自由である。

あかね:で、どこに連れて行ってくれるの?

わくわくした瞳で、あかねはなるに聞いた。

なる:・・・・・・・・・ゲーセン。
あかね:・・・・・・。

本当は聞くまでも無いのだ。
なるの答えはいつも同じだった。

なる:ま、待ってくれ、話せばわかる、話せば。

あかねの怒りの乱舞攻撃を受けると直感したなるは、あかねを落ち着かせようとした。

あかね:いいわよ。ゲーセンで。
なる:えっ?
あかね:今日は久しぶりのお休みだもの。機嫌はものすごく、いいわよ。

あかねはそう言って笑っていた。
たしかに、いつものあかねとは違う。

なる:じゃあ今日は、ゲーセンはゲーセンでも、特別なゲーセンに行こうかな。
あかね:特別なゲーセン?

そう言うと、なるはあかねを連れて電車の駅へと向かった。
あかねはなるについて行った。

あかね:普段は電車代も惜しんでゲームしてるのに、今日は本当に特別な所に行くのね。楽しみ。

電車は郊外に向かって走っていた。
しばらくして、途中のとある駅で二人は降りた。

あかね:ここって、大学があるところじゃない?
なる:その通り。大学が近くにある所は、ゲーセンもたくさんあるんだよ。
あかね:そういうことか。なる、まさか、行きたい大学を周りにあるゲーセンで選ぼうとしているんじゃ、ないわよね?
なる:バレたか。
あかね:・・・・・・。

なるとあかねは駅から大学に向かってしばらく歩いた後、横道に入っていった。

あかね:こんなところに、たくさんゲーセンが!

なるとあかねが入った通りには、ゲーセンが軒を連ねていた。

なる:このあたりの店は、面白いところがいっぱいあるよ。店ごとに特徴もあるしね。

外見こそ似たようなゲーセンが並んでいたが、中はまさに店主の趣味趣向が現れていた。
とにかく値段を安くしようとすべて10円で遊ばせている店、最新機種をたくさん入れることに命をかけている店、人間同士の対戦重視の店、などなど。
どれも個性的で魅力的な店ばかりであった。

あかね:うわー楽しい〜。

あかねはまるで遊園地のアトラクションを見て回るかのように、ゲーセンを見て回った。

なる:ではそろそろ、今日行きたかったお店に行こうか。
あかね:えっ、行きたかったゲーセンって、今までのお店とは違うの?

なるは一つの店に入っていった。
そのゲーセンは、外見はかなり古びた作りだった。

あかね:ええーこんなところに来たかったの?

あかねは不思議そうな顔をしながら、なるについて中に入った。

あかね:あっ。

一目見て、あかねにもわかった。
そのお店は、他の店とは一線を画(かく)していた。

あかね:懐かしい〜。

その店には、テーブル型の筐体が数十台並んでいた。
それだけなら他の店とは変わらない。
動いているゲームが、すべて5年から10年以上前のゲームばかりだったのだ。

あかね:えーこのゲームって、私が小学生の時にあったゲームよね、すごい、まだ動いてる!

あかねは歓声を上げながら、懐かしそうに全ての台を見て回った。
今ではどの店でも見かけなくなった、特殊なレバーやボタンを使うゲームも、この店には当たり前のように置いてあった。

あかね:えーこれ、私が幼稚園に行ってる頃のゲームじゃない?こんなゲームがいまだに遊べるなんて・・・すごい!

あかねは感極まったのか、涙ぐんでいた。

なる:そんなに喜んでくれると、連れてきた僕としてもうれしいね。
あかね:なるのおかげで、こんな懐かしいゲームたちにまた会えるなんて。ありがとう。
なる:いや、お礼なら、あそこにいる人に言うべきだよ。あかね。

なるが指差す先、ゲーセンの奥にある部屋のドアは、木製で取っ手が壊れかけていた。

あかね:あの部屋は?
なる:もちろん、このお店のオーナーの部屋だよ。行こう。

なるはあかねと一緒に、「立ち入り禁止」と書いてある部屋に入っていった。

なる:こんにちは。
男:おう、なるか。久しぶり!

部屋の中には、作業服を着て半田ごてを持った、ひげが特徴的な男が作業台の前にある金属製の椅子に座っていた。
ゲーム基盤を修理しているようである。

なる:おっちゃん、今日も修理?
男:ああ、動いてたゲームが2台ほど突然動かなくなったんだ。
あかね:これ、おじさんが全部修理したりしてるんですか?

部屋の中に置いてある大量のゲーム基盤を見ながらあかねは聞いた。

男:ああ、そうだよ。ゲームを作ったメーカーにも修理できる人がいなくなっているゲームが多いからね。直し方を自分で調べて修理しているんだよ。
あかね:すごい。
なる:おっちゃんのおかげで、僕らはこんな、もう他のお店には無いようなゲームが楽しめるのさ。すごいだろ?

なるは、先ほどからあかねが置いてあるゲームに感動していることを、おっちゃんに伝えた。

男:うれしいねえ。こんなに可愛い女の子にそこまで言ってもらえると特に。

男は半田ごてを動かしながら、笑顔でそう言った。

あかね:おじさんはゲーマーなんですか?
男:昔はゲーマーだったけど、今はこっちの方が面白くてね。
なる:おっちゃんは、もう説明書や設計図が残っていないようなゲーム基盤も、作りや配線を自分で調べて直しているんだよ。ゲームを作ったメーカー自体が無くなっていることもあるし、大変なんだよ。
あかね:へえー。自分がゲームをしなくても、ゲーマーのためになることをするって、素敵なことね。

なるは、この時あかねが言ったこの言葉を今でも忘れていない。
もし自分がゲーマーをやめるときが来ても、その後もゲーマーのためになるような活動ができれば幸せだなと、なるは思った。
そしてもう一つ、メーカーさえ投げ出すようなことでさえ、情熱があれば成し遂げられる、信じれば夢はかなうということ。

あかね:うわーあれも遊びたい。このゲームも懐かしい。

あかねはその後も店に置いてあるゲームを遊びまくっていた。
今日ばかりは、なるも遊ぶ側ではなく見る側だった。

なる:(相当うれしかったみたいだな)

しばらくすると、大学生と思われる若者がたくさん店にやってきた。
いわゆる常連の人たちである。

大学生:へー珍しい、こんな店に可愛い女の子が来てるぞ。

あっという間に、あかねはお店のアイドルと化していた。
こんな店にやってくる女の子は当時少なかったのである。

男:いやーあかねちゃんに毎日来てもらったほうが、新しいゲームを入れるよりも売り上げが伸びそうだ。
あかね:私でよかったら、毎日来るわよ〜。
なる:『GAMER』はどうするんだよ?
あかね:愛にまかせとけば、いいじゃない。
なる:だめだこりゃ。

こんな感じで、楽しい休日は終わったのである。
そして帰りの電車の中。

なる:なあ、あかね。もし僕がゲーマーをやめることがあったとき、それでもあんな風にゲームに関わった仕事ができれば幸せだと思う。

あかねはなるを見つめて言った。

あかね:そうね。でも、なるは絶対おじいちゃんになってもゲーマーのままだと思うわ。
なる:えっ、そ、そうかな?
あかね:きっとそうよ。そして、私もおばあちゃんゲーマーとして活躍してるわよ、きっと。

二人はその頃の自分たちの姿を想像して、大笑いしながら帰ったのだった。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

その頃、喫茶『GAMER』の店の前に一人の少女が立っていた。
少女の黒くて長い髪が風になびく。

少女:ここが、お父様の思い出の場所・・・。

しばらく平穏だった生活は、この来客を機に一気に動き始めようとしていたのであった。


つづく
ここまでじゃ

2005.9.1
連続小説
「GAMER 〜NAS芹沢物語〜」

(NAS芹沢@大阪PalmIII)


私の名は「なる」。
あ、いや、現在の名は「NAS芹沢」(なす・せりざわ)。
それは、私がゲーマーだった頃。
遠い昔のお話・・・。


第23回「堂々誕生、その名はゲーマー『NAS芹沢』」

なるとみんなは、ゲーセンへと向かった。

ゴウ:なんだか、大変なことになりましたね。

歩きながらゴウはそうつぶやいた。

愛:うわーなんか楽しみ〜。
ゴウ:楽しそうなのは愛ちゃんだけ、だよなあ・・・。

先頭を歩く、なるとあかねの後ろからゴウは二人を交互に見ていた。
なるは、楽しそうに歩いている。
あかねはとにかく怒りがおさまらないという感じだった。
ゴウはこれから何が起こるのか、不安だった。
ゲーセンにいるのは一体誰なのか?

あかね:私のなるに少しでも手を出したら、その時点でそいつの息の根を止めてやるわよっ。

握りこぶしに力を入れながら、あかねはぶつぶつ言っていた。
そんなあかねの姿を見て、ゴウは恐れおののいた。

ゴウ:(だめだ、ここまで怒りに燃えたあかねさんを、俺一人で止めるのは無理だ。仲間を集めてでも、あかねさんを止めなければ・・・)

みんなは「GAMER」からそう遠くない場所にあるゲーセンにたどり着いた。

あかね:ここによく来てるのね。ようし、私が直接戦うわ!

あかねはそういうと、みんなの言うことを聞かずに一人、ゲーセンの中へ飛び込んでいった。

ゴウ:あ、あかねさん・・・もうだめだ、あの目は完全に「昔の目」に戻ってる、やばい、血で血を洗う戦いが始まってしまう〜。
愛:お姉ちゃん、待って!
ゴウ:もう、だめだあーーーーっ。

ゴウはしゃがみ込んで、両手で頭をかかえた。

なる:あっ、せっかく場所を案内しようと思ったのに、あかねのやつ、何をそんなにあわててるんだ?
愛:当たり前じゃないの、なるお兄ちゃん。なるお兄ちゃんに別の彼女がいたんだから、お姉ちゃんの怒りがおさまるわけないわよ。
なる:彼女?何のこと?あれ、僕、そんなこと言ったっけ?
愛&ゴウ:えっ、違うのっ?
なる:あれ?好きな人がいるとは言ったけど、彼女じゃないよ。
愛&ゴウ:???
なる:みんな、何か勘違いしてない?僕が言ってるのは、このお店の右の一番奥にある・・・。

みんながゲーセンの前でそんなことを話していると、1分もしないうちに、あかねが店の中から出てきた。

あかね:なる、誰もいないんだけど。
なる:???あかね、誰かいると思ってたの?
あかね:当たり前じゃない、その女を倒しに来たのよ。なるは私のパートナーなんだからねっ。そんな奴に取られてたまるもんですかっ。

それを聞いたとたん、なるは大笑いし始めた。

なる:そういうことか。ちょっと待った、ものすごく勘違いしてるよ、あかね。
あかね:何がおかしいのよ、私の気持ちも知らないでえええええーーーーーっ。

あかねは格闘家並のスピードでややしゃがみ気味になるに近づいたかと思うと、そこからなるのお腹に左ボディ、さらに顔面に右ストレートの2つのパンチを繰り出した。
なるは後方へふっ飛んだ。
しかし、ふっ飛んで倒れようとした直前に、再度猛ダッシュで近づいたあかねがなるに追い討ちをかける飛び蹴りを一発、背中にたたきこんだ。
倒れたなるは、身動き一つしなかった。

ゴウ:終わった・・・。
愛:なるお兄ちゃん、死なないで!
あかね:可憐で純粋な私の乙女心を踏みにじった罰よ。

全力を出し尽くし、ようやく怒りがおさまったあかねであった。

ゴウ:あかねさん、聞いてください。なる様は、このゲーセンの右の奥に案内しようとしていたみたいです。
あかね:右の奥?
愛:そう、さっきなるお兄ちゃんは言ってたよ、右の一番奥にある、って。
あかね:何だろう?

あかね、愛、ゴウの三人は、店の前で倒れているなるを無視して、三人でゲーセンの中へ入っていった。
そして、右の奥へ行ってみた。

愛:一体、何があるんだろう?
ゴウ:このお店で、右の奥にあるといえば野球とかのスポーツゲームと、あとは麻雀だったはずですが・・・。
あかね:ま、まさかっ!?

三人はお店の一番右の奥に置いてある、テーブル型筐体を見た。
その筐体のコンパネには、Aから順番にアルファベットが振られた白い四角いボタンが横一列にたくさん付いている。

あかね:これって、麻雀のゲーム台?
愛:あーーーーー、もしかして!
ゴウ:なる様が好きな人って・・・。

そして、その筐体のデモ画面には可愛らしい女の子が二人、アニメーションしながら微笑んでいた。

あかね:と、いうことは・・・。

あかねはその筐体の説明を見た。
インストカード(ゲーセンに置いてあるゲーム台に貼ってある、遊び方を説明した紙のこと)にはこう書かれていた。

「スーパーリアル麻雀PIII」

あかね:これは、一体どういうこと?
ゴウ:これって、今、全国各地で大人気の脱衣麻雀ゲームですけど・・・。
愛:もしかして、なるお兄ちゃんの好きな人って・・・?
ゴウ:毎日会いに行ってるのは、本物の女の人じゃなくてもしかして・・・?
あかね:ま、まさか・・・?

三人がそう言った瞬間、後ろから声がした。

なる:いや、その「まさか」なんだけども。

そこには、なるがいた。

愛:なるお兄ちゃん、大丈夫?
ゴウ:なる様の好きな人、このゲーセンにいる人って、もしかして・・・。
なる:そう、そのゲームのことだけど。
あかね&愛&ゴウ:はあ?
なる:ちょっと恥ずかしいんだけど、笑わないで聞いてくれ。
あかね&愛&ゴウ:???
なる:僕は、その・・・彼女たちに、・・・・・・恋したんだ。
あかね&愛&ゴウ:な、なんですってーーーーーーーーっ!!!

なるは顔を赤らめて言った。

なる:本気で惚れた、心から・・・愛しているんだ。

三人はなるに近づいて言った。

あかね:なる、大丈夫?あんた、変な病気になってない?

あかねはなるのおでこに手を当てながら心配そうに言った。

ゴウ:なる様、冗談も休み休み言ってくださいよおーー。
なる:冗談じゃないんだ。僕は本気なんだ。
愛:もう、単なる脱衣麻雀メーカーにカモにされて、画面の中の女の子の服を脱がせるためにお金をどんどんつぎ込まされているだけじゃない。なるお兄ちゃん、目を覚まして。しっかりしてよ。

愛は、なるの顔を何度も往復ビンタして目を覚まさせようとした。

なる:違うんだ。

なるは突然、あらたまった声を出すと、みんなに言った。

なる:違うんだ。服を脱ぐとか脱がないとか、そんなことはどうでもいいんだ。僕は、真剣に彼女たちを愛している。毎日その笑顔を見ているだけで、幸せなんだ。

なるはいかにも幸せそうな表情を浮かべた。
あかね達三人は、ただあっけにとられるだけであった。

ここで知らない人のために、「脱衣麻雀」について説明しておこう。
「脱衣麻雀」とは、長らくゲームセンターにあった定番ゲームの一種である。
一対一で麻雀勝負をして、プレイヤーが勝ったら画面上の女の子が服を一枚ずつ脱いでいく、というものである。
なぜ麻雀で負けただけで服を脱いでいくのかは永遠の謎であるが、少しでも先を見たいという男性プレイヤーが次々に100円玉を入れることでそれなりにお店としては稼げるジャンルである。
近年はゲーム界全体の自主規制が厳しくなったため、このジャンルのゲームはゲームセンターからは消え行く立場にある。
この物語で出てきた「スーパーリアル麻雀」シリーズは脱衣麻雀ゲームの最高峰とも呼べるもので、10年以上に渡りシリーズが制作されてきた大人気ゲームある。
「スーパーリアル麻雀PIII」(すーぱーりあるまーじゃん・ぴーすりー)は三作目にあたる作品であり(シリーズ中、女の子が脱衣する作品としては二作目にあたる)、芹沢未来(せりざわ・みき)、芹沢香澄(せりざわ・かすみ)の姉妹が登場する。

「スーパーリアル麻雀」シリーズの人気は世代を超えて広がり、ゲームに登場する女の子は今でいうところの「キャラクター戦略」も行われ、関連CDやビデオの発売などにも波及、アイドル扱いとなり一大ブームを築いた。
現在でも、服を脱ぐことは無くなったものの家庭用ゲーム機用、携帯電話用にシリーズに関連したゲームが登場しており今なお人気は高い。
とても一言で語れるような歴史ではないので、これ以上知りたい人は各自で検索とかして調べてください(手抜き)。

あかね:なるって、ほんとにバカだよね。
なる:えっ?
あかね:なんていうか、うまく言えないけど、これと思ったら何でもただ一筋に愛しちゃうんだよね、まっすぐで、それでいて不器用で。ゲームのことも、本気で愛してる。
ゴウ:でも、行き過ぎるとこんなことになっちゃうんですね。

そしてさらに十年後には、変なOSが載った小さい機械を一筋に愛してしまうのである。

あかね:でもね、そんなところが・・・・・・好きなのよ。

今度はあかねの顔が赤くなっていた。

愛:なるお兄ちゃん、そんなにこの画面の女の子の方が好きなら、お姉ちゃんと別れちゃえばいいじゃない。
あかね:愛っ!なんてこと言うのよ!
なる:それは困る。

なるは即答して、本当に困った顔をした。

あかね:なる・・・。
なる:僕のパートナーはあかねしか考えられない。

なるは真剣に話し始めた。

なる:例えば、『NAS水咲』なんて名前にしてみろ、あかねの本名を使っている以上、あかねの身に何かあったら大変だ。だからエントリーで使う名前は、あえて本名を使わない方がいいと思った。
あかね:なる・・・そこまで考えてたのね。
なる:だからこそ、他の名前を考えていたんだけど、愛ちゃんの「好きな物とか好きな人」という言葉がヒントになった。だから、

なるは胸を張って、一呼吸おいた後にこう言った。

なる:「スーパーリアル麻雀PIII」に登場する、僕が今一番大好きな「芹沢姉妹」にあやかって『NAS芹沢』にしようと思うんだ。
愛:かっこいい名前〜。私は賛成するわ。
あかね:ちょっと、愛・・・。
ゴウ:この名前なら、おそらく全国で付けている人は他にいないですよ、なる様。世界に一つ、ですよきっと!

みんなはあかねの方を見た。

あかね:なによ、こんなゲームの中の女より、あたしの方がもっと胸、大きくて魅力的なのに。ほら、なる、見て。

いきなり服を脱ごうとするあかねを、ゴウは必死に止めた。

ゴウ:あーもう脱衣で勝負しないでください、あかねさんっ!や、やめてーーー。これならよっぽど殴り合いの方がましだよ、もう・・・。
なる:だから、脱ぐとか脱がないとかは関係ないの!純粋に好きなの!

その日の夜、喫茶「GAMER」閉店後。
店に残っているのは、なるとあかねの二人だけだった。

なる:あかね、まだ怒ってるのか。

あかねは黙々とお皿を洗っている。

なる:あかね・・・。
あかね:なるのバカ。
なる:話を聞いてくれ、あかね。

なるはカウンターの中に入り、あかねに近づいた。

あかね:ん、・・・ま、まあ、本人がその名前が好きで一生使えるって言うんなら、いいんじゃないのっ?

あかねは皿を置いて横を向くと、やや突き放したような言い方でそう言った。
いかにも、あかねらしかった。

なる:あかね・・・。
あかね:でも、他の女の子の名前が付いてるなんて、あたしとしてはちょっと妬けるけど、ね。

あかねは不意になるを自分の方へ引き寄せると、両手でなるの腕にしがみついた。

ここに、伝説のゲーマー『NAS芹沢』が誕生したのである。


つづく
ここまでじゃ

2005.8.6
連続小説
「GAMER 〜NAS芹沢物語〜」

(NAS芹沢@大阪PalmIII)


私の名は「なる」。
あ、いや、現在の名は「NAS芹沢」(なす・せりざわ)。
それは、私がゲーマーだった頃。
遠い昔のお話・・・。


第22回「なるが一番好きなのは?」

なる:僕が、ゲーマーを救う・・・。
平賀:その通り。奴らの脅威はもうすぐそこまで来ている。今こそ立ち上がるとき。
なる:もう一つ教えてください。あの技について。
平賀:あの技は闘気を一点に集中させて放つ、一種の気功術。だが、元は他者を攻撃する技ではなかった。

平賀正義はややうつむきながら話を続けた。

平賀:あの技は、自分が何らかの理由で直接レバー等を操作できないときに、闘気を使うことで遠隔操作するための技。かつての『平賀正義』はこの技を使って、賭け事などのイカサマのからくりを遠くから破壊するために使っていたとも聞いている。
なる:では、この技も代々受け継がれてきたもの・・・。
平賀:そういうことになる。だが奴らはこの技を悪用し、組織の目的を達成するためだけに使っている。
あかね:組織の中でこの技を使っている人がいるのはおかしくない?だって、『平賀正義』は一子相伝なんでしょ?だったら、この技を使える人もこの世に一人だけ、なのでは?
平賀:お嬢さんの言うとおりだ。しかし、奴らの中にも平賀流を継承している者がなぜか存在する。その理由は不明なのだ。

平賀正義はそこまで話すと、あかねの父の方を向いて言った。

平賀:そして、もう一つ別の話もしなければならない。
あかね:別の話?
平賀:今から8年前、組織の存在を偶然に知った私と水咲殿、そしてもう一人の男の三人は、組織の活動について調べていた。

あかねの父もややうつむき加減になったのを、なるは見逃さなかった。

平賀:だがある日、組織は忽然とその姿を消した。理由はわからない。ただ、数年後に活動を再開するかもしれないこと、そのときにゲーマーが重要な鍵を握っていること、断片的ではあるがこの二つが情報として残った。
なる:ゲーマーが?
平賀:そこで、水咲殿はゲーマーについての情報を少しでも得やすくするために『GAMER』という名の喫茶店を開いた。
あかね:うちのお店にそんな秘密があったなんて・・・知らなかったわ。

あかねは父を見た。
父はあかねと目を合わせることもなく、何も言わなかった。

平賀:そして私は組織に対抗できる力を得るために、跡取りのいなかった先代七代目平賀正義のもと修行に入った。君たちに見せた技は、この間に会得したものだ。
なる:なるほど。
平賀:そして行動を共にしていたもう一人の男は、残念だがすでにこの世にいない。
なる:もう一つだけ、教えてください。あなたはどうして勝ち続けなければならないのですか?
平賀:組織から勝負を挑まれたとき、敗北すれば奴らの傘下に入らなければならなくなる。だからこそ、絶対的な強さが私には必要なのだ。
なる:今までのこと、よくわかりました。
あかね:で、なる、どうするのよ?もちろん組織と戦うんでしょ?

なるはうなづいた。

なる:それに、多くのゲーマーたちが不幸になるなんてことを僕は放っておけない。
あかね:決まりね。じゃあ私もこれまで以上に力になるわ。
平賀:お嬢さんを危険な目に遭わせたくないからこそ、今まで黙っていたのではないのですか、水咲殿。
あかね:もー誰が何と言おうと、私はやるわよ。一度言い出したら聞かないことくらい、わかってるでしょ?
水咲幸治:・・・なる君、これまで以上に、あかねのことをよろしく頼む。
なる:もちろんです。

なるは微笑んだ。そしてあかねと見つめ合った。

平賀:みんな、ありがとう。これからどんなことがあるかわからない。十分気をつけてほしい。なる君、が本名だね。これからよろしく。

ゲーセンで噂を聞いていただけだった平賀正義は、なるの本名を知らなかったのである。
平賀正義となるは固く握手した。

平賀:さて、早速だが・・・。

平賀正義はなるに突然言った。

平賀:なる君、自分のエントリーネームについて、どう思う?
なる:えっ?
平賀:いま、君は「NAS」という名前を使っているようだが、それでは汎用的すぎると思わないか?
なる:汎用的・・・ですか?
平賀:「NAS」と名乗っている全国のゲーマーはたくさんいるはずだ。やはり日本一のゲーマーを目指すなら、自分だけの名前が必要ではないだろうか。
なる:自分だけの名前?
平賀:その通り。己の存在をアピールするとともに、全国にその名を轟かせてこそ最強のゲーマーとなる。有名になれば、最強のゲーマーを探している組織の連中は必ず接触してくるし、そうなれば組織の情報を探ることができるかもしれない。
なる:なるほど。
平賀:真剣に、一度名前について考えてみてもらえないだろうか。
なる:わかりました。
平賀:君のように「NAS」という名前がすでにあるのなら、それに何かを付け足して組み合わせることによって、誰も使っていない名前にするのが一番簡単ではないかな。
なる:付け足す・・・。
平賀:難しく考えなくてもいいさ。もちろん、迷ったら全く新しい名前を考えて心機一転ってのも、いいかもしれない。
なる:名前、か・・・。

なるは数日の間、ゲーマーとしての自分の名前についていろいろ考えてみた。
しかし、いいアイデアは浮かばなかった。

ある日の『GAMER』店内。

なる:簡単なようで、考えてみるとこれが結構難しいんだよなあ。
あかね:『NAS』だって、突発的に出来た名前なんでしょ?なら、無理していろいろ考えずに、偶然をきっかけにした方がいいんじゃない?
なる:う〜ん。
ゴウ:名前って、ゲーマーである限りずっと使い続けることになるんですよね?だったら、自分が好きな名前にしないとダメなんじゃないでしょうか。

その日『GAMER』に来ていたゴウは言った。

愛:そうだよ、自分が好きなものなら愛着がわくんじゃない?

あかねの妹、愛はめったに『GAMER』を訪れることはないが、この日はたまたま店に寄っていた。
中学生になったが、長い黒髪と愛くるしい丸い瞳は昔と変わっていない。

なる:好きなもの・・・か。
愛:好きな物とか、好きな人とか。それが一番いいかも。
あかね:好きな人・・・そうね、なる、『NAS水咲』にしなさい。
なる:えーーっ、なんでそんな名前にしなきゃいけないんだよ?

なるの頭に、あかねのエルボーが炸裂した。

なる:名前を考えるだけで、どうしてこんなに命がけなんだよ。

涙目のなるは頭を押さえながら言った。

あかね:いいと思うんだけどなあ、『NAS水咲』。
なる:実は、名前の候補はあるにはあるんだけど・・・。
ゴウ:えっ、なる様、誰か好きな人がいるんですか?

ゴウの質問に、みんなの視線がなるに集まった。

なる:ちょ、ちょっと、何みんな。集まったりして。
愛:興味津々〜。
あかね:私の他に誰か好きな人なんかいたら、絶対生きて返さないわよ、なる。
ゴウ:どうなんです、なる様?

なるは返答に躊躇(ちゅうちょ)した。

なる:えーと、その、えーと。
みんな:なる、はっきりしなさい!

しばらくして、なるは言った。

なる:いる。
あかね:えっ・・・。
愛:お姉ちゃんじゃなくて?

なるはうなづいた。

あかね:な・ん・で・すっ・て〜。

あかねは拳を握り締めながら、なるに向かおうとした。
ゴウは必死にあかねを止めた。

愛:その人は、どんな人?
なる:どんな人って言われても・・・とても可愛い人だよ。

なるは幸せそうな顔でそう言った。
あかねの怒りゲージは徐々に上昇していた。
ゴウは身を挺してあかねを押さえていた。

愛:で、その人とはどういう関係?
なる:あの・・・その・・・毎日会いに行ってる。
みんな:ま、毎日〜!!!

みんなは驚きの声をあげた。
なるがそれほど真剣に惚れた女性がいるというのだ。

あかね:『GAMER』にだって毎日来ないくせに・・・毎日会ってるですって・・・もう、絶対に許せない。

あかねは自分を押さえていたゴウを跳ね飛ばすと、なるにつかみかかった。

なる:うわっ、あかね、ちょ、ちょっと待て、待ってくれ。
あかね:問答無用〜!!!

あかねはなるを思いっきりぶっ飛ばした。

ゴウ:い、痛そう・・・。
愛:なるお兄ちゃん、大丈夫?

しばらくした後、なるはよろよろと起き上がると、こう言った。

なる:それでも・・・あの人が・・・好きなんだ。

なるは微笑んでいた。
ここまで言われると、あかねは逆に何もできなくなってしまった。

ゴウ:ここまでなる様を惚れさせた相手って?
愛:一体、誰なの?
なる:僕は、『NAS』の後ろ側にあの人の名前を付け加えることに決めた。今、決めたよ。この名前なら一生後悔はしないと思う。
愛:誰なのか説明してよ、なるお兄ちゃん。

なるは言った。

なる:わかった。今から紹介するよ。ゲーセンに行こう。

なんと、その相手はゲーセンにいるらしい。
ということは、ゲーマーということか?

愛:相手はゲーマーなのね?
あかね:私も行くわ。直接そいつと勝負するわ。どちらがなるのパートナーにふさわしいか決着をつける。
ゴウ:こりゃ、大変なことになったぞ〜。女と女の戦い。これはあきらかに血を見ることになりそうだ・・・。

なるとみんなは、ゲーセンに向かった。

果たして、なるが大好きな人とは一体誰なのか?
名前にまで付けたいほど惚れている相手とは?


つづく
ここまでじゃ

2005.7.31
連続小説
「GAMER 〜NAS芹沢物語〜」

(NAS芹沢@大阪PalmIII)


私の名は「なる」。
あ、いや、現在の名は「NAS芹沢」(なす・せりざわ)。
それは、私がゲーマーだった頃。
遠い昔のお話・・・。


第21回「黒の陰謀」

1週間後、なるとあかねはゲーセンにいた。

あかね:ごめんね、なる。

なるが必死に練習をしている隣で、あかねはそう言った。

なる:ん?何が?

昼食を取る時間も惜しむように、あかねに作ってもらったサンドイッチを食べながらレバーとボタンを動かしていた、なるは聞いた。

あかね:だって、私があのとき「逃げてっ」って言わなかったら、平賀正義にレバーを動かされずにすんだかもしれないのに。
なる:それはもういいんだよ、あかね。

ゲーム中のなるはあかねの方を向くことはなかった。

なる:もし逃げなくても、平賀正義にスコアで勝てなかったと思う。だから、次に会ったときのために、こうして練習してるんだから。
あかね:うん、応援してるわ、ずっと。

あかねはなるを後ろから抱きしめた。

なる:や、やめろ、こんなところで恥ずかしいから、ちょっと、あ、せっかくゲームがいいところだったのに、あああ。

なるはひたすら練習していた。
平賀正義のように、自分よりうまい人は全国にまだまだたくさんいるはずだ。
少しでもうまくなりたい、なるの思いはそれだけであった。

あかね:もう、ゲームのこと考えてるときは全然私のことを見てくれないんだから・・・。
なる:ん?何か言った?
あかね:ううん、何も。
なる:あかね、何怒ってるんだ。今日は変だな。

なるは気づいていなかったが、あかねは、いつもとは違う店の雰囲気をすでに感じていた。

あかね:・・・。

なるの座っている台の左隣では、今まで見たことがない男がプレイしていた。
全身黒ずくめの姿で、黒い帽子をかぶり、黒いサングラスまでかけていた。

あかね:(何なの、あの男・・・)

次の瞬間、あかねはなるの右隣の台を見てはっとした。
右隣の台にも、左隣とまったく同じような全身黒ずくめの男が座っていたからである。

あかね:(これは、どういうこと?)

なるは両隣のことはまったく気にせずにひたすら遊んでいる。

あかね:こいつら、なるのことを狙ってる?

あかねがそう思った瞬間、両隣の二人が立ち上がった。

あかね:
黒ずくめの男たち:はあーーーーーっ

なんと、二人の男たちは平賀正義が攻撃を仕掛けてきた時とまったく同じポーズをとりはじめたのだった!

あかね:まさか!?
黒ずくめの男たち:おおおーーーーーりゃあああああああああーーーーっ!!

二人の男は、なるに向かって技を放った。
なるは、平賀正義と戦ったときと同じように、真上にジャンプして攻撃を避けた。
ゲーム台の表面部分はズタズタに切り裂かれたのだった。

なる:何者だ?

なるはゲームをしているときよりも鋭い目つきで二人の男をにらみつけた。

黒ずくめの男たち:平賀正義とはこれ以上かかわるな。
なる:なにっ?

二人の男はなるの左側に集まると、一人の男が言った。

黒ずくめの男:かかわれば、貴様たちも我々の組織に歯向かう者として放っておくわけにはいかん。

もう一人の男も口を開いた。

黒ずくめの男:これ以上我々のことを調べようとすれば、平賀正義と同様、お前たちも生かしておくわけにはいかん。悪いことは言わん。この件からは、手を引くことだ。

なるにそう告げると、二人の男は風のように去っていった。

なる:組織、とは一体・・・?
あかね:あいつらは一体、何者?
なる:すべては、平賀正義に聞けばわかること。
あかね:なる?

厳しい顔をしていたなるは、ふと笑顔に戻ると、あかねに言った。

なる:平賀正義に聞いてみよう。
あかね:なる・・・。
なる:組織とは何なのか、なぜ平賀正義は奴らに狙われているのか、そして・・・
あかね:そして?
なる:僕たちにこういうことがあることを予測して、僕に技の避け方を教えてくれた理由を。
あかね:避け方?まさか、なる、平賀正義はなるにあの技の避け方を教えるために攻撃してきたと言いたいの?

なるはしばらく考えた後、こう言った。

なる:少なくとも今は、平賀正義は敵には思えない。僕には。

なるとあかねは平賀正義を探すことにした。
平賀正義は逃げも隠れもしていなかった。
いくつかのゲーセンに出没しては、強い相手と戦っているとの情報がすぐに得られた。
なるとあかねは、そのうちの一つの店で張り込むことにした。
張り込みといっても、他のゲーセンでしているのと同じように、修行しながら待つだけなのだが。

あかね:ねえ、他のお店にも行ってみようよ。

あかねが辛抱たまらず、そんなことを言い出した三日目の午後だった。

平賀正義:可愛いお嬢さん、またお会いしましたね。
あかね:平賀・・・正義。

平賀正義は突然やって来た。
誰が見てもすぐわかる、カウボーイハット。
とても組織に狙われているようには見えない、目立ちっぷりだった。

あかね:あー出やがったな、この勝ち逃げ男!

あかねは今にも平賀正義に飛び掛ろうとした。

なる:どうしても聞きたいことがあって、あなたを探していました。
平賀:・・・。
なる:黒ずくめの男たちのこと、組織とは何か、そして、どうして僕たちを助けてくれたのか。
平賀:そこまでわかっているのなら、細かいところまで説明しなければならない。場所を変えよう。
あかね:それなら、私の家まで来て。

三人は『GAMER』へ向かった。

水咲幸治:た、田岡!
あかね:お父さん、平賀正義のこと、知ってるの?

平賀正義を見たあかねの父は、驚きの声をあげた。

水咲幸治:田岡、君が『平賀正義』だったのか。
平賀:すみません。隠しておいた方が奴らにいろいろ気づかれずにすんだのです。
あかね:お父さんの知り合い・・・なの?
水咲幸治:とうとう、この日が来たのか。
なる:???

なるには何がどうなっているのか、全然理解できていなかった。

平賀:では、順を追って私から説明しよう。

平賀正義はこれまでの経緯を話してくれた。

平賀:私の本名は『平賀正義』ではない。名を受け継いでいるだけだ。正確には、私は八代目の『平賀正義』。
あかね:は、八代目?
なる:では、昔からこの名前は引き継がれていると?
平賀:その通り。名前の通り、正義を貫くことができる真のゲーマーにのみ与えられる、一子相伝の名前なのだ。
あかね:ゲーマーって、そんなに昔からいたの?
平賀:そう。とはいっても、昔はコンピュータゲームではない。サイコロや花札など、日本古来の遊びすべてを含めた意味でのゲーマーのこと。
水咲幸治:そんな脈々と受け継がれた名前があったとは。
なる:『平賀正義』にそんな秘密が。

なるは驚きの表情を隠せなかった。

平賀:『平賀正義』は、日本の歴史の舞台において危機が迫ったときにのみ現れる。
水咲幸治:ということは、奴らが動きはじめたということか?
あかね:奴ら?あの黒ずくめの男たちの組織のこと?
平賀:お嬢さんの言うとおり。今、日本のゲーマー界に危機が迫っている。強いゲーマーたちがことごとく、奴らとの勝負に敗れ、奴らの傘下に入っているのだ。
なる:奴らの目的とは?
平賀:なぜゲーマーを集めているのかはわからない。ただ、今言えることは、奴らが何か良からぬ事を企んでいるということ。そして、加担したゲーマーたちが次々に不幸になっているということ。
水咲幸治:君は組織について調べているのか?
平賀:しかし、私の想像をはるかに超える速さで組織は大きくなっている。私だけではどうしても奴らに対抗できない。

みんなは微動だにせず、緊張した面持ちで平賀正義の話に聞き入っていた。

平賀:そこで、私と共に戦ってくれる、そして将来的には『平賀正義』の名を受け継いでくれる、真に強いゲーマーを探していたのだ。
あかね:それで全国の強いゲーマーたちに勝負を挑んでいたのね。
平賀:そして、私は一つの結論にたどり着いた。NAS君、君こそが真に正義を貫けるゲーマーであると。
なる:ぼ、僕が?

なるだけでなく、みんなも驚きの声をあげた。

平賀:NAS君、私とともに戦ってほしい。苦しんでいるゲーマーたちを救いそして、真に正義を貫くゲーマーになってほしいのだ。

熱く語る平賀正義の目は、光り輝いていた。

つづく
ここまでじゃ

2005.7.7
連続小説
「GAMER 〜NAS芹沢物語〜」

(NAS芹沢@大阪PalmIII)


私の名は「なる」。
あ、いや、現在の名は「NAS芹沢」(なす・せりざわ)。
それは、私がゲーマーだった頃。
遠い昔のお話・・・。


第20回「正義を貫け! 死闘決着」


平賀正義となるの戦いは、いよいよ終盤へ入った。

なる:(どうする?奥義がどんなものかわからないけど、さっきのを見る限りでは、やはり攻撃してくるのかもしれない・・・)

あかね:なる、気をつけて!

平賀正義は、今まで何事もなかったかのようにゲーム画面に集中してプレイしていた。
奥義を出すぞ、という素振りはまったく無かった。

平賀:NAS君、君はやはり私が思っていた以上の素晴らしいゲーマーだ。

ふと、つぶやいた平賀正義はこう続けた。

平賀:しかし、ゲーマーは華麗なプレイをただ見せるだけではダメだ。そう、勝たなければ。

平賀正義はそう言うと、またしても全身に力を込めるように体を震わせながら気のようなものを高めはじめた。
しかし、今度は目は閉じていない。

あかね:奥義じゃない技でも、あれだけ意識を集中させて息が切れるほど疲れていた。奥義はもっと気合を入れなければならないはず。
なる:だとすれば、やはり最後の最後までは出してこない。おそらくゲーム終了直前が勝負か。

平賀正義は華麗なプレイをしながら、さらに気合を入れていた。

平賀:はあーーーーーーーーっ。
あかね:一体どんな技でくるの?なるはどうしたらいいの?

あかねは、これから起こることが予想不可能なだけに何もすることができなかった。
なるの左手の甲を見たあかねは、切り傷から出ていた血が止まっているのを見て少し安心した。

あかね:でも、あれよりもすごい技が来たらどうするの、なる?

なるは今までのように変わらずプレイしていた。
しかし、スコア自体はまだ平賀正義の方が数万点上回っており、このままでは勝てないのも事実である。

あかね:なる、がんばって!

あかねはただ祈りながら応援するだけだった。
全方向シャッターで閉じられた、異様な雰囲気のゲームセンター。
すべての台が稼動していたが、三人の他は誰もいない。
なると平賀正義、二人のレバーをさばく音とボタンを押す音が響いていた。

なる:(いよいよ最終面ボスが来るっ)
あかね:このままでは、勝てないわ。なる・・・。

いよいよゲームは最終面7面の最後のボスに突入しようとしていた。
新作ゲームではあるが、二人ともここまで全くミス一つせずに進んできている。
しかし、さすがに最終面なだけあって二人とも余裕がないのかほとんどしゃべらなくなった。

平賀:いくぞ、NAS君。

平賀正義は突然そう言うと、今までよりも全身に気合を込め始めた。

あかね:奥義がくるっ。

平賀:はああああああーーーーーーーーっ!
あかね:なる、逃げてっ!
平賀:おおおーーーーーりゃあああああああああーーーーっ!!

平賀正義は今までと同じようなモーションでなるに向かって攻撃をしてきた!

なる:(一か八か、いくぞっ)

なるはレバーをちょん、と軽く動かしたのと同時に筐体に手をついて、なんと筐体の操作台の上で逆立ちをした!
さらに、逆立ちをしたまま両腕を曲げ、その反動を使ってなんと両手だけを使って逆立ち状態のまま真上にジャンプした。

平賀:なんだとっ!
あかね:なるっ!

平賀正義とあかねは、ほぼ同時に驚きの声をあげた。

なる:(奥義を避けつつ、しかも平賀正義より高得点を取るためには、)

足で飛んだときよりははるかに低いものの、なるは確かに空中に浮かび上がった。

なる:(奥義を避けてすぐにゲームに戻ることが必要。そのためには、レバーに手が近くなければならない。レバー操作にすぐ復帰さえ出来ればまだチャンスはある)

しかし、次の瞬間なるは衝撃の光景を空中から目の当たりにした。

なる:なにっ!!

誰もいないはずの、誰も触っていないはずのなるの台のレバーが、カクン、と右方向に倒れた。

あかね:あっ!
なる:

平賀正義は自らの技を、なるの筐体のレバーに向けて放ったのだった。

あかね:そんな・・・。
なる:しまった!

なるが操作していた筐体のゲーム画面内の自機は、倒されたレバー通りに右に動いて壁にぶつかり1ミスになってしまった。
なるはレバーから手を離す寸前にレバーを軽く動かすことで、自分が一定時間レバーを触らなくても安全な位置に自機を持っていったのだが、その作戦は見事に破られた。

あかね:平賀正義の奥義は、なる自身を攻撃するものではなくて最初からレバーを動かすための技だったんだわ!
なる:やられた。完全に。

もはや勝負はついていた。
なるは1ミスによりパーフェクトボーナスを逃したために、平賀正義のスコアには届かなくなった。
平賀正義はその後もきっちりとプレイし、最終面ボスをクリアするとパーフェクトプレイで終了した。
なるも、最後までゲームをやり遂げた。

あかね:負けた・・・のね、私たち。
なる:残念だけど、そういうことだね。

平賀正義は息を切らしながら、二人に語りかけた。

平賀:いいか、NAS君。勝負とは・・・勝ってこそ、価値がある。そして世の中には君のような良い人ばかりがいるわけではない。どんな汚い手を使ってでも・・・勝とうとする輩(やから)がたくさん・・・いる。

あかね:あんたもその一人ってことね、今度はあたしが相手になるわ!

あかねは、今にも平賀正義に飛びかかりそうなほど怒りを爆発させていて、ファイティングポーズをとっていた。

平賀:おっと、美しいお嬢さんとはさらさら戦う気はないのでね。これで失礼するよ。

裏口から逃げようとして後ろを向いた平賀正義は、右手をカウボーイハットに乗せ、なぜか一度なるの方を向きなおしてこう言った。

平賀:そんな輩に負けるなよ、NAS君。君は正義を貫くことができるゲーマーだと私は感じた。だからまた近いうちに会うことになるだろう。さらばっ。

そう言うと、平賀正義は颯爽と街の中へ消えていった。
一瞬の出来事だった。

あかね:こら、待ちやがれ〜!勝負はまだ終わってないわよ!

追いかけようとするあかねを、なるが止めた。

あかね:なる。
なる:いいんだ。もう、いいんだ。
あかね:なる、でもあいつは、あいつは・・・。
なる:いや、完敗だよ。今回は。

なるはそう言うと、左手の甲を右手で押さえながら立ち上がった。

なる:平賀正義は終始、僕よりもうまいプレイをしていた。その証拠に、ゲームの途中で一度もスコアを抜くことができなかった。
あかね:それはでも、あいつが変な技を使ってきたから。
なる:いや、ゲーマーたるもの、どんな状況になってもそれに打ち勝ち、最後には勝たなければならない。僕はそれができなかった。だから仕方ないよ。
あかね:なる・・・。

あかねはなるを軽く抱きしめた後、左手の甲の傷を軽く舐め始めた。

なる:あかね・・・ちょっ・・・。
あかね:でも、でもね、もう、こんなに無理しないで。私、なるが心配で・・・心配で・・・。

あかねは泣いていた。

なる:ご、ごめん・・・。僕は大丈夫だよ、ありがとう。

なるはあかねの髪を右手でなでながら、軽く微笑んだ。

平賀正義との戦いは終わった。
奥義が見事に炸裂して勝利した平賀正義。
一方なるとあかねは、これまでの勝負の後とは全く違う、釈然としない気分だった。
勝負としては確かに負けた。しかし、

平賀正義はなぜそこまでして勝ちにこだわるのか?
あの技は一体何なのか?
どうして強いゲーマーたちを狙って勝負するのか?
「また近いうちに会うことになる」という最後の言葉の意味とは?

すべてが謎に包まれたままであった。

つづく
ここまでじゃ

2005.6.2
連続小説
「GAMER 〜NAS芹沢物語〜」

(NAS芹沢@大阪PalmIII)


私の名は「なる」。
あ、いや、現在の名は「NAS芹沢」(なす・せりざわ)。
それは、私がゲーマーだった頃。
遠い昔のお話・・・。

第19回「これが平賀流だ! なる、史上最大の危機」


1面クリアしたとき、なるは左隣にいる平賀正義を見た。
挑戦状を叩きつけてきた割には、そんなに恐そうな人物ではない。
しかも、なるが見た平賀正義の横顔はどこか楽しそうでもあった。
なるは、ますます平賀正義のことがわからなくなるのだった。

なる:(この勝負に決着が着いたとき、すべてが明らかになるような気がする)

なるはゲームに集中することだけを考えることにした。

あかね:こら、なる、気合入れなさいよ!

平賀正義を気にして落ち着かないように見えるなるの様子を見たあかねは、いつものようになるに気合を注入した。

2面も、互角の展開を見せた。
両者とも全く危なげなくクリアしていく。
しかし、途中のボーナス点の取り方に微妙な差が出て、平賀正義のスコアが数百点ほどなるを上回った。

平賀:NAS君、さすがだ。
なる:ありがとうございます。
あかね:なる、いちいち答えちゃダメよ。こいつ、絶対怪しんだから。

口から出任せのようなあかねの一言であったが、このあかねの「勘」はまたもや的中していたことが後でわかることになるのだった。

平賀:やはり、君を倒すには並の技では無理なようだ。そろそろ本気を・・・出していくぞ、NAS君。

平賀正義のその一言に、なるもあかねも身が引き締まる思いだった。

あかね:あれほど完璧なプレイをしているのに、まだ何かしようっていうの、こいつ。
なる:(くる。平賀正義の本当の力を示す、何かが・・・何だ?)

平賀正義は気合を入れるような叫び声をあげた。

平賀:はああああああーーーーーーーーっ!

そして全身に力を込めるように体を震わせながら、目を閉じた。

あかね:ゲームの最中に、目を閉じるなんて!

あかねはあっけにとられた。
さらに平賀正義の叫びは続く。

平賀:おおおーーーーーりゃあああああああああーーーーっ!!

まるで格闘家が何十枚もの瓦を割るときのような、ものすごい気合の入った叫び声とともに、平賀正義は両手を自分の胸の前で合わせとかとおもうと、即座になるの座っている右側方向に向けて、攻撃でもするかのように両手を突き出した。

あかね:何?何なのこれ?

まるで部屋全体が揺れるような衝撃が、一瞬突き抜けたように思えた。
屋内なのに、なぜか風が吹いているような感覚だった。

なる:うっ・・・・・。

なるの声を聞いたあかねは、なるの方を見た。
なんと、レバーを握りしめているなるの左手の甲に、軽くナイフで切られたような3cmくらいの鋭い傷が横一文字に二本ついていた。

あかね:ま、まさか!?

あかねは平賀正義の方を見た。
平賀正義は肩で息をしていたが、目はもう開けており普通にゲームをプレイしていた。
なるの左手の甲の傷の端から、血が流れ落ちる。

なる:ううっ・・・・・・・・・。

辛そうにしてはいたが、なるはゲームに関してはいつものように平静にプレイしていた。しかしながら、レバーを操る手は痛そうだった。

なる:平賀正義の秘密とは、相手の・・・プレイヤー自身を攻撃できることだったのか・・・・ううっ。
あかね:これが、平賀正義の正体ね!とんでもない奴だわ!
なる:あかね、もう少し後ろに下がってるんだ。
あかね:私はなるを応援するわ。一歩も引かないわ。こんな奴になるが負けるもんですか!
なる:あかね、危ないぞっ。

あかねは平賀正義の方を見たまま動かない。
平賀正義はいつのまにか楽しそうな笑顔が消え、真剣な表情になっていた。

あかね:なるには一切触れずに攻撃している以上、確かにこれは反則ではないかもしれない。でもあれは一体何なの?武器を持ってるわけではないし、どうやってなるを傷つけているの?

なると平賀正義は、その後も勝負を続けている。
すでに3面の中盤に突入していた。

あかね:平賀正義は肩で息をしている。ということは、あの技は連発はできなさそうね。しかも、2面が終わって3面が始まるまでの間、つまりゲーム中の操作が不要な時に攻撃してきた。

あかねはなるの左手の甲を見て、傷を気にしながらつぶやいた。

あかね:つまり、目をつぶって意識を集中させなければ出せない技であれば、自分の手が忙しい間は相手に攻撃できないということだわ。

そこまでつぶやくと、あかねはもう一度平賀正義を凝視した。

あかね:ということは、もし次に同じ技で攻撃してくるとすれば、3面をクリアしたとき・・・。
平賀:ふう、さすがだNAS君。よく耐えた。だが・・・いつまで持つかな。
なる:・・・。

二人はともに3面を終了。
スコアは依然として、平賀正義がほんの少しリード。
なるもほぼいつも通りの実力を発揮していて、やはり互角であった。

あかね:くる・・・今度もあの技がくるっ。

平賀正義は謎の技のモーションに入った。

平賀:はああああああーーーーーーーーっ!
あかね:なる、危ないっ!
平賀:おおおーーーーーりゃあああああああああーーーーっ!!

平賀正義がなるに向かって技を発した、その時だった。

なる:とうっ!

なるは素早く立ち上がると、自らが座っていたゲーセンの椅子の上に右足を乗せ、椅子を踏み台にして真上にジャンプした。

平賀:なにっ!?
あかね:なるっ!

着地したなるは、また椅子に座りなおしてスタンバイした。
なるのゲーム筐体は、平賀正義の攻撃を受けて大きく揺れたが、なるはそれを上方に逃げることでかわしたのだった。

あかね:攻撃を、よ、避けた!
平賀:NAS君、私は君を甘く見すぎていたようだ。さすがだ。
なる:勝負はこれからだぜ、平賀正義っ!

4面も難なくクリアされ、勝負は5面に突入していた。
どちらも一歩も引かない展開が続く。
しかし、なるは手の甲を気にしながらのプレイでいつもより集中力を欠いていた。
スコアはいまだに平賀正義が数千点上回っている。

あかね:なるが勝つには、どうすればいいの?
なる:(絶対に勝機はある。待つ、待つんだ・・・今は我慢だ・・・)

平賀正義は攻撃をあきらめたのか、5面、6面が始まる前では何もしてこなかった。
なるは落ち着いてプレーしていた。
平賀正義はやや疲れた表情をしている。

あかね:やはり、あの技は多用はできないみたいね。奴は相当疲れてるわ。なる、今がチャンスよ!
平賀:ふふ、やはり君と戦うときは、こういう状況になると思っていたよ、NAS君。

平賀正義はカウボーイハットのずれを右手で直し、その後あらためて背筋を伸ばすと、激しくレバーを動かしながら、なるに語りかけた。

平賀:やはり、君に勝つには奥義を出すしかないか。
あかね:奥義ですって!
なる:うう・・・まだ、まだ他にも技があるのか・・・。
平賀:その通り。そして私が勝利する。
あかね:そこまでして、どうしてなるに勝とうとするの?何のために?

あかねの問いに、平賀正義は何も答えなかった。

平賀:平賀流奥義、今こそ受けてもらおう!!

少しずつ明らかになる、平賀正義の秘密。
攻撃は最大の防御ということなのか?
これまでにない苦戦が続く、なる。
勝負は最終面、7面に突入しつつあった。

平賀正義のいう「奥義」とは一体どんな技なのか?
なるはこの危機をどう乗り越えるのか?
決着のときは刻一刻と迫っていた。

つづく
ここまでじゃ
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Akiary v.0.51